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斎藤由多加のブログだよ

国際交渉のゲーム理論

060719掲載

北朝鮮が国際交渉で奇妙な支配力を発揮している。
交際交渉で先進国がここまであたふたするまでの影響力をなぜ北朝鮮が持つのかという疑問は誰のあたまをも一度はよぎっているのでと思う。

これからの焦点であるアメリカと北朝鮮のかけひきは、「ゲーム理論」にのっとって観戦すると実に興味深いケースである。

そもそもゲーム理論というのは、人間の駆け引きを数学的に体系化した理論である。ゲームという言葉は共通しているけれど、冷戦時代の外交やビジネス交渉のための理論として発展してきたものだ。だからいわゆる昨今のゲームソフトの制作者で興味をもっている者はあまりいないようだ。だが、実はゲームの基本形がここにはある。この分野は1994年にはノーべル経済学賞を排出しているほどである。

ゲーム理論の基礎はアメリカがルーツで、フォン・ノイマンという数学者がその基礎を気づいたといわれるが、その基本は「囚人のジレンマ」といわれる逸話に集約されている。
その内容の特徴は、すべての駆け引きがそうであるように、ベストの選択肢が相手の出方によって変化するという点におかれている。
相手がどういう手で出てくるかで次のベストが変化する。こちらがどう出るかでふただひ相手の選択肢も変わるわけで、最終結果が相手というの不確定要素によって決定されるという状況をモデル化するのが目的である。
で、その組み合わせをすべて計算すれば、両社にとって一番メリットがある妥協点がおのずと見えてくる、という理論である。これはゲーム理論ではナッシュ均衡と呼ばれ、一方がこれを外れるとどうあがいても損をすることが確定する。まさに冷戦時代の核威圧ゲームがこれにあたる。この結論としてはアメリカ、ソビエトどちらも核を使わないことが互いに最大の利点をもたらす、という結論がもたらされる。互いに損失を出してまで戦争を実行するまでもない、という理論は2500年前の孫子の兵法の基本原則に帰着する。

ただし、そこには前提がある。
こちらも相手も同じインテリジェンスを備えているということが必要となる。その前提が崩れるとこの理論は崩壊する。
これはつまる所、「生への願望」や「資源の枯渇」など人為的に解決不可能かつ不可逆な不都合を仮想敵にすることで同抱意識を人類にもたらす知恵である。よくよく観察すれば、国連憲章など世界共存の理念はすべてこの類によって構成されている。

だからアメリカは、支配権を有利に手にするため資本主義を広め、人類の価値観を啓蒙してきた。それによってゲームを有利的に進められるからである。

だが、「敵国を叩き潰すためには自分たちが滅ぶことも辞さない」なんていう国家が参加してくると、このゲーム理論はぐらついてくる。「盲信的思想」はこの理論の敵となる。交渉が不可能となると、残される手段は武力行使のみという最悪のシナリオとなる。

北朝鮮が何を望んでいるのか?
なににもましてそれがこの国際交渉の妥協点の有無を決定するすべてのスタートである。