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斎藤由多加のブログだよ

ファミレスでの考古学

日曜日のファミレスはおもしろい。
今日、業界の友人であるSちゃんと久々に会って雑談をしていたらどこかの席から
『酸っぱいって英語でなんていうんだっけ?』
という声が聞こえてきた。

メニューをめくりながら
「『酸っぱい』は『サワー(sour)』だ・・・・・けど、本当に同じ意味なのかな?」
なんてぼんやり考えてたら、Sちゃんの言葉が聞こえなくなって、そのことをずっと考えてしまった。

ジョン万次郎の時代から何百年もたつけど、いまだに誤訳されたまま誰も気づかない言葉ってのが、もしかしてあるんじゃなかろうか?とね。
日本語の「取締役」と"Executive"って、微妙に違うみたいだし、「そば」は"Noodle"とはぜったいに違うものだし(Noodleというのはスープに浮いているものだ)。僕が、酸っぱい、と言う状態と、欧米人が『サワー』と言う味が同じたど、どうやったら確かめられるのだろうってね。
だって、日本語で『酸っぱい』って、料理の形容としては、ほめ言葉にはなりえない形容だもの。レストランで「これ酸っぱいんですけど」といって時って、「すみません、すぐ取り替えますね」といった対応を求めていう言葉ではないだろうか? 悪い意味でない表現は「酸っぱい」じゃなくて、「お酢の入った味」だけど、もしかしたら「サワー」って言葉のニュアンスはそっちじゃないだろうか? 

中学生の時に、形容詞の比較級や最上級を習っていたときのことを思い出す。
~This is one of the tallest buildings in Tokyo.~
 "これは東京で最も高いビルのひとつです。"という表現。

最上級にtheがつくのは、それが絶対無比な存在だから、と説明された。
でも、「もっとも高いビルのひとつ」、って表現は、最上級が複数あるという意味でしょ?
それじゃまるで「黄色いモンシロチョウ」っていってるのと同じじゃないか。川口浩探検隊の「前人未到の熱帯ジャングルに巨大人喰い虎を発見」といっているのと同じじゃないか!?(前人未踏の地に「人喰い虎」はいるはずがないから) 

つまりさ、日本語としてはあきらかに変なフレーズなわけです。にもかかわらずこの疑問への答えが見つからないまま三十年近くが経過し、テレビから平気で流れてくるのを耳にするようになった。そしていつしか自分もこのフレーズを使用していることに気づく。

こういう「ああ勘違い」みたいな誤訳がそのまま僕たちの基盤になっていることって意外と多いのではないだろうか?

スペインの印象派の画家たちは、もしかしたらいまの私たちよりも色彩感覚が強かったのではないか、というコメントを聞いたことがある。
彼らの脳裏には、どのような色で映っていたのか、確かめるすべはない。
おなじ理由で、「サワー」という言葉を最初に使った人たちが、どのような味覚でその言葉を用いたのか、確かめるすべはない。ただどうでもいいくらい小さいことである。
一つ一つは小さいことだけど、そういうものがとてもたくさん積み重なっているような気がする。