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斎藤由多加のブログだよ

<第五回>孤独なプレイヤーを戒めるキャラクター

(以下の内容は、当時の企画意図の再現性を意図し、ほぼ日刊イトイ新聞2004年2月13日号に初出した原稿をそのまま転載したものです。ただしただし写真を一部追加しております。)

「社長は孤独」とよくいいます。
こと中小企業の社長という仕事をやっていると、
この孤独感をいやというほど味わいます。
むろん社長ですから決めたことは
そのままなんでも通るけど、
誰も叱ったり褒めたりしてくれない。
社員にやっかいな悩みを相談できるわけでもない。
判断の結果だけがあとで無言でひょっこり訪れるだけ。
資金繰りが悪化していたり
在庫の山が倉庫にうなっていたり、
はたまた社員が突然退職してゆくという現実だけが
無言のまま顔を覗かせてくるのです。
社長というのは多かれ少なかれ
「誰かに叱って欲しい」と
思っているのではないでしょうか?
(このあたり、社長さんである
 読者の方にうかがいたいところです)

だから大将となるこの『大玉』では、
プレイヤーの采配を叱ったり
褒めたりしてくれるキャラクターを
入れたいとおもったわけです。
最初にネタをばらしてしまいますが、
このゲームのキモは無名の兵たちとの一体感です。
勝とうとするがあまり自軍の兵たちを犠牲にしすぎると
信頼度(海外版では『モラル』と翻訳されています)が
下がり、結果勝てない。
そういうときに
「なにをやっておられるか、親方さま!!
 なさけない、いや実になさけない!!」
と叱ってくれる人がどうしても欲しかったのです。
怒られているのに嬉しくなってしまう、そういうキャラ。

でこのキャラクターは誰? ということになるわけですが、
企画段階から大滝秀治さんと決めていました。
それ以外に考えられなかった。
伊丹さんの『あげまん』に出演されている大滝さん、
八つ墓村』の弁護士を演じる大滝さんが
つよく印象に残っていたのですが、
格別印象深いのは黒澤明さんの『影武者』で
仲代達也さん演じる武田信玄に檄を飛ばす大滝さんでした。



大滝さん、果たしてゲームなんぞに
出演してくれるのだろうか?
民芸という劇団に最初に電話したときは、担当の方も
「ゲームの何ですか!?(理解不能)」という感じ。
何度かお電話しているうちに、
「‥‥お引き受けできるかわかりませんが、
 では大滝宛の手紙を書いてください、
 そのまま渡しますから」ということでした。
お気に入りのウォーターマンの万年筆で手紙を書き、
私の経歴書と簡単な企画書、
そしてケーキとともに劇団事務所に置いてきて
待つこと2週間。

その間気が気でないわけですが、
地元のバーでは近所の外野が
「浅草の××(という一杯飲み屋)に
 よくみえるらしいから待ち伏せすれば?」
とか
関根勤さんにお願いしたら」
とか、合格発表をまつ受験生のように茶化されるばかり。
(麻布十番の地元常連は、
 私の大玉を肴にするものだから、
 制作の一部始終を知っています)

そんな夢がかなった時というのは嬉しいものです。
まさに天にも舞い上がるような気持ち。
自分は「大滝秀治」になりきって
声を出しながら原稿を書く日々が続いたわけであります。
かなり変だったと思います。
海外でも通用するような、
まるで音楽のような日本語にしたいと思ってました。
だからなるだけ独特の言い回しを
強調して書くように心がけました。
駒場東邦中高等学校(私の母校です)の佐藤健二先生、
アドバイスありがとうございました。
そして2004年9月17日。
大滝さんが手にする事前にFAXした台本には
かなりかきこみがはいっている‥‥。
そして開口一番こう質問されました。
「さて、と。まずこの映像はどこで流れるんですか」
「テレビからです」
「どうやって?」
「ゲームの機械をつなげるんです」
「ほう、それは、みんなもってるわけ?」
「そうです」
「売ってるの?」
「売ってます」
「いくらで?」
「1万円くらいです。」
「で、その機械はどんな形?」
「これくらいの箱です」
「ほぅ‥‥。そこに100円をいれるの?」
「入れません。ソフトを買っていれるんです」
「ソフト‥‥、カセットみたいなものですか?」
「そうです」
「じゃ、この映像の舞台となる絵か何かありますか」
「‥‥これです」(画面のプリントアウトを見せる)
「景虎(主人公の名前)はどこにいるの?」
「手前のここです」
源信(敵)はどこ?」
「ここにはいません。一番最後に出てきます」
「どうやってそこにいくの?」
「合戦に勝ってゆくとそこにいけるんです」
「負けるとどうなるの?」
「勝つまで何度もやるんです」
「なんども?」
「ええ‥‥」
「‥‥だったらここはこうはいわないでしょう」
インタビューでは「ゲームに疎い」、
とおっしゃってますが、大滝さんはおそらくこのときに、
本作品の本質を直感的に
すべて把握されたのではないでしょうか‥‥。
出来上がりをゲーム映像に合わせてみると、
そうとしか思えないのです‥‥。

大滝さんのインタビューはホボニチのこちらに載せてあります。