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斎藤由多加のブログだよ

ことばと文化(バージョンアップ済)

060619掲載(現地時間)

この回は、実はあわてて書いたので、しかもその途中に外出時間がきてしまったため、誤字脱字のみならず文章がへんだったので、部屋に戻って再度手を入れた。

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さて、モスクワ市内には日本語などかけらも見当たらない。だから、英語のメニューがおいている店はいいけれど、そうでなければ「からっきし」なにもわからない。

外国人向けのレストランなんてものは、そもそも変なものしかない。覚えのある味と、媚びた演出、そしてそもそも値段バカ高い、という三拍子そろったあたりがいやである。

しかし、いくところはそんなところばかりである。だからいちいち高い。

なにせ自分のジェットでロシアまでくるような大金もちのおじさんが参加しているものだから(これはこちらに来てわかった)いたしかたがない。

さて、そういう外国人むけのレストランで、はじめて日本語メニューがでてきた。
モスクワの高級レストランは、メニューの表紙が木と厚い皮でできていて、時にはメニューだけで1Kgくらいのおもさがある(これも演出であろうけど)。ここのメニューが、下の写真にあるような、まるでネットで自動翻訳したような日本語がつぎつぎと並んでいるのである。それがまるで高い金を出している自分がバカにされているようでもあり、あるいは彼らのまぬけさを悟ったかのようになっている自分が偉く思えたりもし、おもしろいので写真に撮った次第である。ろう?

▲食材に使われている部位名をそのままメニュー名にすると、まるで解体作業現場にいるような錯覚をおこす。その効果としては食欲をかなり減らすことが判明した。

▲心臓も心も、たしかに英語では「ハート」だし、ロシア語でもそうなのでしょう。しかし「雄牛の心というサラダ」なんて、シュールすぎてかっこよすぎ・・。仮に東京の名物シェフのレストランでこのメニュー名がでてきたらと考えたのだけど、演出として深読みしたくてもやかりぶっとびすぎの命名だ。辺境のレストランでこれをみた僕の気持ちを汲んでほしいのだけど・・・、たぶん機械直訳のせいなんだろうね。

▲たしかにそのとおりのものがでてくるんでしょうが、頼みませんでした。やっぱ、料理名ってさ、ゲームソフトの名前といっしょで、素材をそのまま出してもねぇ・・

▲タクシーとか、ソフトウェアとか、エレキギターとか、無理に日本語にするとせったいに変なものというのがあって、ノンアルコールってのもその一つなんでしょうね
。「あえて訳さない」というのも自動翻訳の重要な役割であることをおしえてくれました。

▲こういった料理名が載っているメニューなもんだから、この料理も、「ほんとはちがうんじゃないのぉー?」って邪推してしまうわけで・・・。

そういえば、旅行にもってきた文庫本を「ペーパーバック」と訳しておきながら、心の中で「いや、せったいちがうなぁ」と今日心の中で考えてたことを思い出した。

自分の著書が文庫化した、という事実が持つ社会的意味は、ビートルズが歌う「ペーパーバックライター」の意味とは、たぶんまったく逆だもの。
そういう訳が僕らの周囲にはすごく多いのだろう、と思うわけで、鈴木孝夫氏の「ことばと文化」(岩波新書)にあったおもしろい記述を引用する。
"Rolling stone gathers no moss"(転石苔をむさず)というのは、「いつまでもフラフラしてたら大成しないぞ」という意味で教わったけど、本来は「いつまでも若々しいんだ」という意味があるそうだ。そういう知識をもたないとローリングストーンズの意味を逆に取り違えてしまう僕らがいるわけである。

つづく