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斎藤由多加のブログだよ

<第七回>回転構造をゲーム作品に取り込む

数回にわけてご紹介してきた
「大玉」というゲームですが、それでは、できあがった「大玉」というのは
果たしてどんなゲームなのか、それを例にしながら、
ゲームの回転構造について、お話しします。

●●「大玉」ってど゜んなゲーム!?●●

まず、ゲームをひとつの絵で表現するならば、
こんな絵になります。(制作協力 ファミ通編集部)



以前にもたとえましたが、
ピンボールラグビーorアメフト)の
融合みたいなゲームです。

●●ゲームの「軸」とループ構造●●


わたしはよく、ゲームの企画をするときに
「軸」という言葉をつかいます。
「軸」というとまっすぐな
直線をしているように思えますが、ゲームというのは前回お話したとおり、反復できる相似形というか、なんとなく回転運動をしている気がする。
じっさいに形があるわけではないので
感覚的なものですが‥‥
何もしなければぐるぐると
回り続けていて(アイドリング)、
なにか入力すると、形がすこし変化して、
そのまままたぐるぐると回転しながら入力を待つ‥‥
この構造を文字で書くことができないので、
ゲームの企画はともするとややこしく思われがちです。
でも、実はとても簡単なんです。
(これを企画のループ構造と以降よびます。)
テトリスに代表されるように
基本のループ構造は簡単なほどゲームはいいと思います。

●●「大玉」の企画の軸●●

大玉を例にその構造を説明します。
スタートと同時に出陣しゴールを目指す
「釣鐘衆」(画面中央にいる釣鐘を担いだ人。
ラグビーで言えば、ボールをもった選手にあたります)を
上の図の左手奥のゴールまで導いてやれば、クリアです。


とはいうものの、そうはさせまい、
という敵が左手から現れては
彼らを押し戻そうとしてきます。



このままですと、釣鐘衆は敵に押し戻され、
やがて自陣まで至るとゲームオーバーと
なってしまいますから
なんとか彼らを押し返さなければなりません。

そこで、味方の兵を出陣させるわけです。



出陣した兵は釣鐘衆を守ろうとしますから、
敵味方との間で前線がつくられ、
スクラムのように勢の多いほうが
この前線を押し上げてゆきます。



残念ながら味方の兵数は限られていますから、
このままですとそれでもどんどんと
押し戻されてしまうことになります。
そこで、「声の指示」と「大玉」の出番です。
声で「みぎ」と指示を出すと、
フォーメーションが下の図のようになり、
前線突破を試みます。



敵陣が瞬間的に押し上げられたところに
大玉をうまく撃つと、
敵兵を拿捕し味方にすることができるわけです。



これを繰り返しながら、
つまり敵を撃ちつつ味方兵を増やし、
ゴールを目指してゆくというゲームです。
この「繰り返し」というのが大玉という企画の
基本ループです。簡単でしょ?
ここに肉付けをしてゆく要素が多々ありますが、
それらが「コマンド」とか「イベント」
「バラメーター」と呼ばれるもので
企画の軸を際だたせるものですが
軸そのものではありません。

●●回転を見つけよう●●

ゲームを企画するとなると、ストーリーを直線として考えようとする人も多いようですが、
それだとたったひとつの物語を追いかけることになるので反復性が薄れることになります。それに対してテトリスのシナリオに終わりはありません。
限られたピースが、ちょうど数字のように、クリアするとすこしづつスピードが上がりながら、ただ同じ構造を繰り替えすだけです。
言い換えると、たった数種類のピースで、このゲームは無限に続くのです。プレイヤーはそれまで培った知識を駆使して、すこしづつ高まる難易度に挑戦しつづけるわけです。これはすごいことです。(無論、それがゆきすぎると指先の反射神経を競うゲームとなってしまいますが・・)

道を歩いていて、この循環・回転する構造を発見することが私の趣味であり仕事です。
物事を『循環』『回転』としてとらえると、社会がもっともっとゲーム的に見えてくるからです。

すでにおわかりのとおり、ここに「物語」とか「シナリオ」はありません。
主人公がどうする、という直線的な記述はあまり意味がない。ここにあるのは、構造です。構造で何かを表現する、というのは、文字の発想をしていると難解に見えます。
でも一度身に着けてしまうと、いろいろなものが表現できるようになる。
世の中には、一歩引いてみると回転や循環しているものがたくさんあります。
一番簡単なものは、「すうじ」でしょうか。
0
から9までの10の数字で、すべての分量を表現してしまう。これはすごいことです。
ループする構造にすることで人間は無限を手に入れたのです。
日本の昔の単位だと、「億」とか「兆」とか「京」とか、さらにその上のものまで、
桁が上がるにつれて単位をいちいち命名しなければなりませんでした。
西暦に対する元号もしかり。元号の名前が有限である限り、未来を定義できなかったものを、桁上がりを反復することで無限に図ることができるようになったのです。

自然界にも回転反復する構造のものはいくらでもあります。たとえば水と雨と地球環境、あるいは山手線のダイア、はたまた虫の一生と産卵、など、すべてのものは「回転構造」、「循環構造」として捉えることができます。