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斎藤由多加のブログだよ

時代のイコン

ここのところ妻とはドライブがてらのランチが週末の日課になっているが、今日は桂花ラーメンを食べに新宿にいった。

そのついでということで、新大久保にあるビンテージギターショップに立ち寄った(実はこっちが本当の目的だったのだが)。

アメリカの好景気と中国のf超バブル景気から、GIibsonのOLDモデルは、ここのところマーケットでの価格が急騰し日本がバブル時代に保有していたコレクションは海外流出しているとのこと。58年のレスポール(GoldTop)にいたっては、店頭にあるもので840万円、程度がさらにいいものはバックヤードで値段がまだついておらず、1300万円ほどになる予定とのこと。

これは、なんというか、ロックギターのストラデバリウス化ではないか。

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帰りの車中で突然Queenが聞きたくなって、後部座席をあさっていたらオペラ座の夜があったので、かけてみる。
Queenのギタリスト、ブライアン・メイのギターは、GibsonでもFenderでもない、自作のモデルである。僕の記憶が正しければ、若き頃、インテリのお父さんと共同で暖炉の木を削りだしてつくったギターだ、という。タコみたいな形をしている「へんなギター」、それがかもし出すのが、ご存知、世界のQueenのギターサウンドということになる。

彼らがMusicLifeの表紙を飾っていたアイドルグループだった頃、「Queenのギターサウンドは音が玩具みたいだ」と友人の間ではよくけなされていた。たしかにこの自作ギターの音は、低音がごっそりと抜け落ちたような、ちょうどラジカセにエレキを直付けしたような、あるいは拡声器から出てくる音のような歪んだ音が特徴で、ま、あまりロックバンドのレコードでは聞きなれない「へんな音」であることは中学生の頃から気づいていた。

新宿のオムやディスクロード(輸入レコード専門店)で買う海賊版レコードを友人と貸し合ってはあれこれ聴いてみても、Queenのライブはいつも最悪だった。これは録音状態の問題とかそういうことではない。コーラスがないのはいいとしても、フレディは高音部を低く歌うし、演奏はすかすかだしと、エアロとキッスと根本的に違って、なんというかまともに自曲を再現できないのである。それがQueenというバンドだった。要はロックマニアからはバカにされて見られていたけらいがある。

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しかし、フレディがAIDSで死んで、Queenは伝説となってしまった。メインボーカルが不在なったせいで彼らの音楽は封印され、ブライアン・メイのギターサウンドも含めてすべてが時代のイコンとなった。

そして21世紀、Queenは復活した。なんだかんだといわれながらも、Queenを聞いて育った人は少なくなかったのである。彼らの遺伝子にQueenのサウンドは定着していた。多くのミュージシャンにカバーされ、本家よりは格段にうまいパフォーマンスが続々とされるようになったのである。

そうなってくると「だめだ」「よくない」といわれていたものも、徐々に「それがいいんだよ」となる。ブライアン・メイのギタープレイもコピーの対象となり、ライセンスコピーもののギターがショップで時々置いてあるのをいまだにみかける。人間の価値観なんていい加減なものである。

Gibsonのオールドだって、音でいえば、いまの物に劣らないわけがない。道具というのは進化するものだ。だが、時代のせいで絶対数がなくなるとなると値段が付きはじめ、コレクションとなりはじめる。そうなると不思議に「この音がいいんだ」といつのまにかなってしまうのだ。

僕たちは多感な子供の頃に見聞きしたものに影響されて大人になった。その時のヒーローは、たとえどんなに指摘をされたってヒーローであることには違いがない。それと同じだ。

いまGibsonのオールドのサンバーストモデルは世界市場で3000万円を超え始めているという。ジミーペイジを聞いて育った少年たちが経済的に余裕のあるオヤジとなり、その時の音と夢を求めて大金を積んでくるというのは、いやらしいというよりも微笑ましいことに思える。

「当時胸をときめかせたあこがれのビンテージGibosnを買うために株式公開を目指すんだ!!」
なんてIT経営者がいたら、意外に意気投合してしまうんだろうな・・。

カメラだ、万年筆だ、ビンテージギターだ、と最近週末になると往年のアナログアイテム偵察に出かける僕についてきては、店内のマニアックな中年客と店員とのやりとりをいやおうなしに聞いている僕の妻は、「そういうオジサンたちの熱中振りがとてもおかしい」、と、いつもうれしそうに言うのである。