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斎藤由多加のブログだよ

プロと素人と「えせプロ」

最近、タクシーに乗っていると、「どの道でいきますか?」とか「ここ曲がりますか?」と、いちいち聞いてくるドライバーが多いことに気付きます。なんで気付くかというと、そのたびにうとうととしていた自分が、ふと我に返るその回数が最近とみに多いからです。
それがここのところあまりに気になるので、ドライバーに聞いてみたところ、理由があるそうです。その理由とは、クレーマー客が多いとのこと。「なんでこっちの道をとおらへんのや!?」と大クレームを付けられ閉口することが最近多々あるせいで、「ここ曲がりますか?」といちいち確認する、という次第。

ま、それはそれでいたしかたのない事情なのでしょうが、乗客に意見させてもらうならば、これじゃ自分で運転しているのとあまり変わらないわけで、うたた寝をしたり、電話をしたり、つまり「車内の乗客の自由時間」が浸食されている、それが最近のタクシーというわけです。
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そもそもなぜタクシーに乗るのか、という話しですが、それは「道路状況のプロ」だからです。タクシードライパーに求めるスキルは、家族の自家用ドライブに求めるものとはちと違う。観光地などでは顕著ですが、その違いとは、「最短距離でいってくれる」という究極のプロさばきの有無。行き先をいえば、カーナビよりも高度に、混雑状況や最短ルートを判断してくれる。運転手というよりも、水先案内人、いや事情通。それがタクシーの運ちゃんのプロの腕でした。カーナビはずいぶんと進化しましたけど、事情通のプロと比べれば、その差は一目瞭然。。ところが、タクシーにこのカーナビが入ったおかげで、最近のドライバーは、プロのスキルが落ちてきている、その結果としての悪循環が、先のクレーマーの出現になってきているのではないでしょうかね?
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医者や弁護士や、不動産屋さん、内装屋さん、葬儀屋さんにいたるまで、プロというのは「困っている人を助ける」人のことをいうのだと思います。重要な判断を求められるのはクライアントとしてはありがたい。だけど、ガキの使いじゃあるまいし、細かな指示質問をいちいち求められると、「お金を出してこの人に何をお願いしているのだっけ?」と疑問が頭をもたげてくるものです。
どの業界でもプロは、困っている状況を、実に見事にさばいてくれる。こういう人はお願いする側としては、とても気持ちがいい。しかし、おなじく「えせプロ」という人も中いて、「この人大丈夫かよ?」と途中で不安に思えてくる。その時はもう遅し。

むしろ「自分はまだ素人なんで、道を教えてもらえますか?」と言ってくれた方がわかりやすくていい。「じゃ、別のタクシーに乗りますので」という選択肢を与えてくれるわけですから。
依然に、「ハンバーガーを待つ3分間の値段」という本を出したのですが、これは、社会に平然とある、こういう紛らわしい不案内さを、写真で撮りためたものでした。ひとことでいいますと、「はい、承りました」といって待たせるのはやめてくれ、せめて「3分少々おまちいただきますが、よろしいですか?」とマック並みに聞いてくれ、という意味のタイトルです。
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何年もひとつの仕事をしていると、ついぞ「自分はプロだ」と信じたくなるものです。しかし、プロと「えせプロ」の臨界線、それは実は「30分少々かかります」というちょっとした配慮の有無ではないか、と思うのです。いちいちこまかく確認する必要があるという話しではありません。客に「じゃ、その時間、居眠りさせていただきますね。」という、より有利な選択肢をくれる。その意味で「自分は素人なもので」という一言は、中途半端なプロより多くの選択肢をクライアントに与えてくれるという点で、むしろありがたいのと思う事が日常でもしばしばあるものです。