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斎藤由多加のブログだよ

「多からず少なからず」がいいんです

「多からず少なからず」という、最近めっきり聞かなくなった慣用句がある。
ま、なんというか、「間をとって適当なさじ加減で」的な、いわゆる曖昧表現である。いまみたいなはっきりしたことが求められている時代にはあまり歓迎されない言葉なのだろうか。

でも、この「多からず少なからず」って考え方が、ゲームの設計にはとても大事なんだな。
今いくつか走っている開発に、「大人の科学」みたいなシリーズがある。そのひとつが、簡単にいうと「エンジンをつくるゲーム」。個人的にずっとやりたかったテーマで、今年はずっとエンジン設計の本ばかり読んでたりメーカーの人に話を聞きに行ったりと、つまりいま僕はこの分野にはかなり詳しいのである笑。

これ、自分で削った筒にガソリンを噴き入れてピストン動作させ、(中略)レースをしようというものなんだけど、当然このプログラムの裏にはたくさんの方程式が入っているわけです。

最初は一人でしこしこ調査しながら進める企画も、作業が進んで軸が見えてくると、プロトタイプということになる。このあたりになると企画メンバーは複数になる。合流してきたスタッフには、さらに細かい企画作業をお願いするんだけど、たとえばエンジン動作のリストアップなんてのがこれにあたる。

このプロセスで、「結構知識ありますよ系」のスタッフから上がってくるのが、「エンジンがうごく」とか「エンストする」とか「オーバーヒートする」といった、実際にどこかで聞いたことがある言葉のリストだったりする。

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でも本当にゲームに必要なのはね、正解と不正解のリストではないんだな。正解と不正解の間にあるたくさんの「ちょい惜しい」的な動作。たとえば、「オーバーヒートしそうな状態」とか「ノッキングしかけている状態」とか「トルクが少し足りない状態」とか。それらよりさらに細かいレベルの現象だったりとか。

つまり、あたりとはずれの2値しかないシミュレーションってのは、坊主めくりみたいに、条件が合致しない限りうんともすんともいわないものになっちまうわけ。ゲームは試行錯誤を繰り返させるわけだから、「もうちょいだよ」とか「おしいね」とか、「惜しい度」をプレイヤーへの勇気づけして表現してあげなければならない。「まだ100%正解ではないけどもう少しだよ」、「このままだとかなり危ないよ」という状況をどれだけ、「らしい動作」として用意しておくかが重要なんだと思っている。こういう曖昧な中間状態を発想する上で中途半端な専門知識ほど邪魔なものはない。

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シミュレーションってのは、「XXすればするほどいい」、ではなくて、「多からず少なからず」というバランスポイントをどれだけ見つけられるかがおもしろさの肝なわけで、でしかも、実際のエンジン工作も本来そうなわけだけど、でも「ゲーム」となると、知識に自信がある人ほどなぜかその間をすっぽりと忘れてしまうんだよな・・・。

右と左の間にある選択肢をどれだけ見せてあげられるかが、試行錯誤の面白さだと思うんだけど・・・作業、やり直しだぁ・・・。ブーブー。