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斎藤由多加のブログだよ

MagicSlate(マジックスレート)

初代Macの開発チームのメンバーとしてクイックドロールーチンを書いたビル・アトキンソンはその後、いまのPhotoshopの原型となるMacPaintという、マウスを使ったペイントソフトを書き、そのあとアップロフェローとなってマルチメディアの原型といえなくもないHyprerCardを書いたプログラマーです。

完全に標準言語として定着したいまのHTMLを彼がどう見ているか、興味深いところですけれど(どこかの雑誌でインタビューを読んだことが有るけど、悔しがっていた)、彼が上記のプロジェクトの合間にアップルに提案したタブレットマシンがあって、それがMagicSlateというものです。

僕はその原型のスケッチをみせてもらったことがあって(そのコピーももらいました。マッキントッシュ伝説というインタビュー集で紹介したことがあるけど、そのうち電子出版で配信したいと思っています)、ま、「そんな絵空事のようなハードは誰が作るんじゃい!?」という疑問も取材していて感じつつも、ま、形だけとるといまのipadに近いといえなくもない。Newtonという、ジョブス不在の時のアップルがかつて出していたPDAにも近いのですけど、Newtonなんて今の人は知らないですよね?

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このNewtonラインは、ジョブスがアップルにもどってきて早々に打ち切られた。アップル創業当時からジョブスはソニーをライバル視していて、ま、ソニーは当時のアップルなぞ知らなくて当然でしょうけど、彼には家電フェチっぽいとろこがある。その証拠に、プログラマーがよろこぶような製品には興味が無いし出さない。打ち切った理由のひとつはそのあたりかもしれないと思ってます。

で、今日帰宅途中のタクシーの中で考えていたことが、「ハイパーカードはなぜ普及しなかったのか?」などというどうでもいいようなことなんですけども、つまり家電とIT機器の世代交代のスピードの違いとでもいいますか・・ま、なのでも今日のブログはあまり整理できていないかもしれません。

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パソコンのソフトで、ある程度の完成度に到達したものはすべて捨たれてゆく、というジレンマがあります。WordもExcelPhotoshopも、例外なく進化しつづけていかなければならない運命なのです。で、これがPCのアキレスのかかとです。

いっぽう家電というのは、しょっちゅうバージョンアップしている技術を導入するわけにはいかない。家庭用ゲーム機がいい例ですが、5年間はおなじハードで継続しないとならないわけ。これはデジタルテレビもDVDプレイヤーも同様です。

で、ソニーをライバル視しているジョブスが、「変化し続けないとならないIT機器メーカー」でコンシューマーを狙う手口として考えたのがデジタル・ハブという考え方なんだと思うんですよね。
変化の激しい部分はMacにまかせておいて、周辺機器は家電コンセプトでいきましょう、という。つまりITのパートはMacが一手に引き受けるから、あとはそこで吸収して家電ローテーションでいきましょう、というかね、

パソコンで売れるのは「ツール」です。というかパソコンは常に未完成でないとならない。
完成したら、姿を消してしまうものだから。たとえば、DTM(=音楽制作)のツール類。バージョンアップがなくなったら、専用機に姿を変えてしまう。形状はマウスやキーボードよりもつかいやすいですからね。でもこの分野は製造コストでの生存競争にまきこまれることになります。

その点、家電は、「ツール」ではなく「コンテンツ」が売れる。CD、ビデオ、DVD、家庭用ゲーム・・・ハード環境が安定している前提でないと、コンテンツ制作者があらわれませんから、「コンテンツ制作ロイアリティー」で儲ける。ハードはどんどんと陳腐化するけれど。

この両方をやるとしたら、どうします?というところで、iTunesが登場です。iTunesというのは当初はただの音楽管理ソフトでしたけど、いまは課金ソフトです。「iPodにアップル経由以外のコンテンツはいれさせないぞ」という番人です。もし将来アップルにアキレスのかかとが登場するとしたら、ここのしばりになると思います。

何がいいたいかというと、プログラマーであるビル・アトキンソンのマジックスレートと、ジョブスのiPadは形状が似ていますが、用途はまったく反対、ということです。前者は未完成で、ツールで進化するIT機器。後者は完成されていてコンテンツを視聴する家電、ということです。ハイパーカードもその象徴に思えてならない。

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iPadは安いですがそのコストはコンテンツでしっかりとカバーされる。これは任天堂がつくったビジネスモデルに似てる。しかしそのハードの非柔軟性を吸収するのはMacないしはPCで、そのコストもユーザーが負担することになる。だから僕たちのデジタルコストはこれからもどんどんと増えるんだと思います、PCコストは以前よりはずいぶんとやすくなったとはいえ、ね。

それにしてもジョブスはずいぶんとかわったやり方で自分の夢を実現している人です。その発想と強引さは、日本からは生まれてこないものかもしれないなぁ・と思うわけです。

まとまりのないブログでごめんなさい。