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斎藤由多加のブログだよ

38度線の向こう側

友人の結婚式のため20年ぶりにソウルを訪れた。ソウル市内からバスで1時間程行くと38度線の非武装地帯に出る。観光名所であるが、この週末はKさんに誘われて僕はここを初めて訪れた。

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観光客用に設置された望遠鏡に500ウォンをいれて覗くと、反対側からこちらを監視する北朝鮮の兵士が見える。北朝鮮の人を生で見るのは初めてのことなので不思議な気分である。写真撮影可能なエリアは制限されていて、黄色い線のふちに背伸びしてシャッターをきる。

数キロにわたる非武装地帯は、その背部の警備が固く、地雷すらが埋められているという。半世紀以上、人が立ち入らないせいで稀少な野生動物が多く生息すらしているともいう。まるで、「ナウシカ」に出てくる腑海みたいな、のどかでいながら薄気味悪い、近未来映画のような響きがある。

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北側陣営は、過去幾度となく38度線を地下からくぐる形で侵攻用トンネルを掘りすすめてきているそだ。南側はそれらを見つけては潰すというつばぜり合いが続いている。デモンストレーション的にそのうちの一つ「第三トンネル」が観光客に開放されていて、非武装地帯の下に到達することができる。僕ら訪問者は地下70m以上の深さまで徒歩で上り降りすればここに行けるわけで、とはいうもののやわな体にとっては結構な運動量だった。

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「日本のみなさんは、北朝鮮などと仲良くする必要はない、と思っておられるでしょう」
地上に戻ったガイドの韓国女性はこの言葉を何度も強調した。
そりゃそうだろう、と頷く自分がいる。
「でも、ソ連とアメリカによって38度線が置かれた時、私たちは、まさか互いがこんなに遠い国になってしまうとはだれも思っていませんでした」と、やけに熱く語る。
昨今のニュースしか見聞きしていない僕は言葉を聞き入ってしまう。

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この板門店の近くにある、韓国北端の駅「都羅山駅」。
北京オリンピックの際には、韓国の列車がこの駅を初めて「通過」し、北朝鮮を北上し、北京まで貫通する計画があるという。もしこれが実現すれば、初めて、ふたつに分断されたひとつの民族が、その列車の中で再会を果たすことができることになる・・・。いや、それはヨーロッパにまでつながることになる。いわば「悲願の達成」のまたとないチャンスということになる。

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いま両国は、停戦状態にあるが、決して終戦ではない。
望遠鏡でしかみることができない敵国にいるのは、親戚縁者であるという状況、そのアリアティーがいまひとつピンと来ていない自分は、海に囲まれてきた幸運にボケている。故郷を分断された国は、実はほかにもたくさんあるわけで、でもそのリアリティーをも僕は欠いている。