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斎藤由多加のブログだよ

15歳の決断

文化祭の度に、娘が通う女子高にカメラを担いで足を運んだ。
娘はESSサークルに入っていて、年に一度の発表会がそこであるからである。
ESSってのはEnglish Speaking Societyの略だが、娘が所属するそれは要するに英語でミュージカルを上演するのが主たる活動である。

中高一貫の六年制だから、下級生の中学生は修業期間、いわゆる脇役専門である。これが高校生になってくると英語力も演技力もつけ、いよいよ「主役争奪」という競争の洗礼を受けることになる。
ちなみに娘が中三だった昨年は舞台裏でスポットを担当した。
自宅から懐中電灯をもってゆく、というので何事かと聞いたら、暗闇のスポットブースで台本を読むためだという。内向的な娘だからいささかびっくりしたが、実は中三は毎年全員が裏方にまわるルールになっているそうだ。すこし安心した。

本番前日、僕は花束を買って遅くに帰宅した。娘に花束を買って帰るのは初めてのことだった。メッセージカードには「裏方の仕事を一生懸命がんばれることも、とても素敵だと思います」と書いた。翌朝、恥ずかしそうに礼をいう娘がいた。

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したがってこの年の舞台には、娘の晴れ姿はなかった。舞台上の役者にスポットライトがあたるたびに、その動きが娘の晴れ姿だとおもって観劇をし、その写真を撮った。

その娘が、下積み三年間をようやく終えたというのに、ESSを辞める決断をした。理由はよくわからない。妻に聞くと人間関係でも練習の大変さでもないようだ。思春期の娘に対しての父親というのは実に無力なもので、とくにこういうデリケートな話については何かを聞き出すことができない。
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娘は小学生の頃、バレエを習っていたことがあった。ある年その発表会があるというので、祖父祖母らを連れて日本橋まで繰り出したのが7-8年前のことだ。近所の同級生、Aちゃんと同じ舞台だったことは聞かされていたが、美人で有名なAちゃんはかわいい白のバレエコスチュームで登場し、一方の娘は「となりのトトロ」の衣装だった。舞台袖で一生懸命踊っている娘は晴舞台にふさわしいメイクをしているのだけれど、いかんせんトトロの衣装である。娘の女心の中で、この状況はどのように理解され着地しているのか・・なんてことを推し量りつつ、すこし切ない気持ちになった僕がいた・・・。

小学生でも中学生でも社会に出たからには、それまで親が考えたことのないこと、たとえば外見とか、社交性とか、そういったものが試されてくる。競争の激しい「舞台の世界」ではなおさらだろう。評価が配役というリアルなランク付けとなって本人に言い渡される。

家庭から「世間」へ出て、愛娘がそれらの洗礼を受けることが成長過程でとても大切なことはわかっている。が、そこにおのずと勝者と敗者が出てくるのも社会である。男親にはそれがどうにも切ない、こと「外見」のように自分が関係していること、そしていかんともしがたいことには・・・
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娘がどういう理由で三年間続いた部活をやめる決断をしたのかはわからないが、小さな胸で考えたあげくの決断である。親としては見守るしかない。まだ15歳の娘が今の自分をどう見ているのか、父親はうまく聞くことができない。異性であるが故の壁と無力さをただ感じる。いかなる理由があったとしても、それを元気づけてやりたいと思うだけである。

そして今年、愛する娘はいよいよ「女子高生」になる。恋愛、失恋、絶望、嫉妬・・・思春期の荒波が待ち受ける娘のこれからを、未熟な人間であるこの僕が、娘の男親として、どう力づけられるのだろうか?
今年は僕にとっても試練の時期、である。