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斎藤由多加のブログだよ

言われないと存在しないもの ~その1~

シミュレーションゲームの題材を選ぶことは、人が気付きもしなかったようなものごとの因果関係に光をあてることだと思う。

因果関係というのは不思議なもので、いわないと気付かないものだ。むろん、だから見つけたものはユニークな新機軸ゲームになるわけだが、そもそも実在する「関係」というのはモノじゃない。つまり目には見えない。見えないものを発見するというのは観察者の洞察力に依存してくる。

だからシミュレーションゲームの新作づくりというのは、正体がはっきりしないものを発見するところから始まる。らしきものを発見したら、そこに名前を付けることから長い企画の旅は始まる。

この目に見えない、よくわからないものを関係者に言葉で説明するというのが、企画者の次の仕事だ。これは骨の折れる仕事だ。ゲームの肝となる因果関係は、けっきょく画面には表示されないものばかりだから、明快な対象物を欲してうずうずしているプログラマーにもデザイナーにも、忍耐力を要求する地道な作業となる。ドキュメントに記述しにくい内容だが、書かないとどうにも前に進まない。

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言わないと、だれも存在に気付かないモノというのがある。慣用句では「言葉にしないとわからないもの」ともいう。

たとえばいまでは「空気」という名で知られているもの。
空気を発見した人、というのは、かなりえらい。彼は、そこになにかが存在するような気がしてならない、という直感から始まり、そしてそれがどんなものなのか、現象面からひたすらリアセンブリするように調査を繰替えしていったにちがいない。そして何もない空間を指さして「ここになにかがある」と人々を説いていったにちがいない。

そして僕らはいま空気の存在を信じて疑わない。が、よく考えれば一度も見たことがないわけで、もし人から「空気」という名前を教えてもらっていなかったとしたら、なにもないと思い込んでいるだろう。「言われないと存在しないもの」とはそういうものだ。

僕がシミュレーションにほれ込んでいるのは、企画者にそんな「発見力」が大きく求められるからだと思う。

つづく