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斎藤由多加のブログだよ

明日は急遽胃カメラの日となった

ソフト会社の社長をこれだけの期間やっているわけですから、ストレスによる胃潰瘍なんてものはとっくに慣れたはずなのですが、昨晩から急激な胃潰瘍に襲われてしまいまして、急遽明日は胃カメラとなりました。胃カメラを飲み込む時の痛みというのは何歳になっても慣れない。今晩は憂鬱なのであります。実は、「胃潰瘍には慣れた」なんて上で強がってますが、むしろ実は年齢とともに自分が弱っている気がするわけで。

その兆候なのかもしれませんが、電話なんてものは捨ててしまいたい、メールなんてものも見たくない、もうすべて投げ出してしまいたい・・そんな思春期の高校生のような気持ちが中年の自分の脳裏をよぎっているのであります。今日はそんなことを考えていての話を少々。

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映画のシーンなどで、「ちょっととなりの部屋に・・」と人を呼び入れるシーンが登場します。同室にいる人には聞かれたくない話をする映像表現です。

僕は学生時代建築を学んでいたんですが、木の板(=壁)一枚を空間に一枚置くことによって、その空間はがらりと変わる。ここで何が変わるって、人の心理がかわる。空間デザインの本質というのはその魔術の手法だと思っています。これつまりヒトの「視覚」や「聴覚」にはいる情報を遮断するだけの話なわけで、病院の相部屋にあるたった一枚のカーテンが人間の行動をがらりと返る力があるわけですし、さらにいえばスポットライトによるライティングとBGM(による音声遮断)でも、同類のマジックは起こすことができます・・・つまり空間設計ってのは、いいかえると実は情報操作なんです。薄い壁一枚で仕切られた安アパートの屋根を持ち上げて上から見ることを想像してみてください。赤の他人同士が数センチの距離で別々の生活をしているわけですから、この状況って、とても不思議です。視覚を持たない(聴覚だけの人)にしていわせると、ろくなプライバシーなどないといえるわけ。それくらい、人の空間感覚は情報に誤摩化されているといえます。

開発チームが西麻布と大崎チームに別れてからというもの、両拠点間でiChatを利用したビデオ会議を最近するのですが、このビデオ会議がすこぶる評判がいい。おなじビル内でも1階と3階の打ち合わせをわざわざビデオ会議でするくらい。

相手の顔をみて話すだけで、ことばの理解度はここまで違うか!?という効果もさることながら、Quitすれば、瞬時に自分の空間に戻ることができる手軽さ。これはマジックのような効果があります。かのMITメディアラボ(マサチューセッツ工科大学ネグロポンテさんのとこ)で研究されていた様々なツール類、たとえば相手の顔をデスマスクのようにかたどって、その裏側から映像を投射するとディスプレイとは比較にならないほどリアルに見える・・これは、世界がいちばん仲良くしてほしいと願っている二人・・つまり冷戦状態にある米国と旧ソ連の首脳会談用に研究されていた、という逸話があるようです。ちなみにこのサンプルを見たければ、ディズニーランドのホーンテッドマンションの仕掛けに使われてます。

話は戻りますが、パソコンという極めてパーソナルな(=位置移動がまったく必要がない)テレビ会議は壁という固定物をソフト化して置き換える。オフィスを瞬間的にドリフのコントに出てくる貧乏長屋に変えてしまう。必要時は人と話していたいけど、おわったらとっとと一人に戻りたい、という人間のわがままを、ソフトが柔軟に対応しているフレキシブルウォールといえます。つまり住人たちが部屋のレイアウトを仮想的にがらがらと組み替えられる状態。

たしかにiChatで呼び出せるとなったとたん、一人で仕事場にしても不思議なくらいさびしくないわけ。遮断する物体を「情報」に置きかることでオフィスが仮想に隣接したりはなれたりするようなもの。

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人とのコミュニケーションをこういう量的な方法に置き換えると、その量を「計測」することが可能になるわけで、「いつも話している人たち」とか「まったく話そうとしない人たち」といった人間関係的な意思疎通の量をビデオ会議の回数や時間で把握することができるようになる・・・これは極論ですがね。すくなくとも「一つの空間内」ではなかなか計測することができなかった、人と人のやりとりの指標ができてくるわけです。

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「情報が人間を熱くする」という名コピーを亀倉雄策氏がリクルートCMのために書いたことがあって、そのスピーチを拝聴する機会があったのですが、こうおっしゃっていた。「情報って何なんだろうって考えてたら、つまるところそれは人間だってことに気付いたんですよ」と。

人間同士を遮断するのが壁や窓だとしたら、その間を行き来する視覚聴覚情報を遮断するのが、ここでいうところのビデオ会議。人間を熱くするのも胃潰瘍にするのも情報だとしたら・・・人間と人間が一緒にいる間にやりとりされる情報量って、視覚と聴覚以外にあと何テラバイト/sがあるんだろう? そこにスパム・フィルターをかけることができたら、胃潰瘍の進行をすこしは遅らせることができるんだろうか?なんて。笑