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斎藤由多加のブログだよ

メニューと料理はちがいます その2

私がライカ系のカメラにはまっているものですから、周囲の知人に、なるだけ自分と同じようなカメラを買わせて仲間に引き入れようとする傾向があります。

しかし、そんなことをここ数年続けてわかって来たことがあります。私の周囲にいる人たちは、カメラ好きは多いけれど、写真好きはほとんどいない、ということ。

「どこそこのメーカーはXXX万画素のフルサイズを出したけれど、ノイズが多いと評判で」とか「どこそこはAPS-CサイズのCCD搭載の新型を予定しているようだ」とか、そういう情報に詳しい人は、さすがゲーム業界だけあって、あちこちにいます。

しかし、「じゃ、いちどお互いの傑作写真を持ち寄って見せ合いませんか」となると、てんで反応が鈍くなる。知人のS氏の写真を見せてもらったことがあるんですが、その膨大なレンズ資産とはかけ離れた、まるで被写体に興味のない写真ばかり。「Sさんはカメラが好きなのであって、写真は別に好きじゃないんだ」ということが素人の僕ですらすぐにわかりました。その時は、なんといっていいやら、すこし複雑な気持ちでした。

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自分がカメラが好きであることを「写真がすき」と周囲・本人ともども勘違いしてしまうようなケースってのは、カメラ以外の分野でも意外に多くて、たとえば、

●飲み会好きと酒好き(酒好きは一人で酒を飲む)

とか、

プログラマーとPCユーザー(プログラマーの多くは ワードやエクセルの活用法などまるで知らない)

とか

経営コンサルタントと経営者(コンサルタントに本当に経営が出来たら、人のコンサルなどしていない)

とか

ゲームクリエーターゲームプログラマー(!)

など、いろいろと混同しがちなケースがあります。

ちなみに、15年くらい前はよく「アッブルの創業者のジョブスは実はプログラマーじゃないんだってさ!! 」と、的外れなことを得意げに語るエセ情報通がいました。ジョブスはアップル操業の時から技術のバイヤーで、日本にはしょっちゅう買い付けに来ていた。で、その最初の技術提供者がウォズニアックというわけ。つまりジョブスは完成型から商品を考える人だから、マックやiPhoneというへんてこな製品がいまあるわけで、もし彼が(天才であっても)プログラマーだったら、いまごろHPでネットワークの技術者を勤めた後退職金もらって老後を生きているのが関の山でしょうね。

技術があればいい製品ができるのか、という質問は、ですから、楽譜の読み書きを学べば名曲が書けるのか? という質問に似てとてもナンセンスな質問だと思う。プログラマーやエンジニアといっても、人間をわかっていなければ、いいカメラなど開発できるわけがないし、CCDから送られてきた信号をどういうチューニングするといちばん優れた発色バランスになるか、なんてのはむしろエンジニアの「感受性」の問題だったりするわけです。つまり優れたエンジニアというのは、人間よりの部分に興味がなければなれない。

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要するに、写真が好きな人ってのは、表現者であるのに対して、単にデジカメが好きなだけという人は、技術評論家に近い人だったりするわけ。ま、どちらも愛すべき分野ですけどね。このふたつはまったく異なる趣向です。

で、Sさんと写真仲間になってキューバ旅行でもいこう、なんて夢をあきらめた僕は、Sさんを新製品に関する信頼すべき情報源としておつきあいを続けているわけです。