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斎藤由多加のブログだよ

あと何分でトイレ空きますかぁ?

「あとどれくれい待てばいいの?」といいますか、要するに自分の置かれている位置が、知らされているのと知らされていないのではストレスに雲泥の違いがある、ということを「ハンバーガーを待つ3分間の値段」という本で書いたのですけど、そこには、ディズニーランドとかバス停とか信号とかスーバーのレジ列とかを世界のあちこちで撮った写真を紹介してます。

今日は、そのすこし先の話なんですけど、いちばんこの手の工夫から放置されているのが、人間の負の部分、「トイレ(個室)」です。

腹が痛くて飛び込んだデパートの食堂街のトイレ。
こういう時ってどういうわけかいつも満室なんだよな。

「おい、いつまで使ってんだよ!!!」

「はやく出ろよ。あと何分かかるんだよ!?」

「なんとかいえよ!」

「出て来たらただじゃおかねえぞ」

と見えない相手にいいたい事がどんどんとエスカレートする。

おなかもぐるぐるしてますが、頭の中もぐるぐると「別のフロアの空き室トイレを探すか、それともここでもうすこし待つか?」という究極の選択肢が回っている・・・

P9202535

↑「なんとかいえよ」と怒りのあまりに撮った満室トイレ写真

そんな時にいつも「あとX分でおわります」という表示が、どうしてトイレにできないものか? と思っちゃう。誰でもそうじゃないですか? (だとしたら、その怒りの気持ちをどこかにしまってはいけません!!!)


ちなみにこういうサービス技術ってさ、IT技術とかの高度な問題じゃなく、使用者が自ら「あとX分」というボタンをどれだけ正確に申告するか、という人間行動的な問題によるものと考えていいでしょうね。日本語でいう「マナー」。そこさえきちんと明確になれば、そろそろどこかの国のデパートで採用されることになると思う。だって、全人類的に必要だもん、これ。←本気でそう思うる

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で、僕のようなゲームの企画屋は、ここで「どうゃって利用者に正確に申告させるか」を考えてしまう。僕の仕事ってのはそういう仕事なんです(爆) ゲームの企画やってるというと先端IT技術を売りにしているように思われそうですけど、で、たしかに近いものがあるんですが、自分の仕事で向かい合う相手はこの「人間側」なんです。「どうやってうんこ時間を正直に申告させるか」というアイデアをデザインして仕様にしてゆくのがゲームデザイナーいうわけ。人間心理ってのはおもしろいもので、ゲーム性を応用すると、いかようにでも誘導できる。どちらかというと、IT部よりもここのあたりがゲームというものの真髄部分だと僕は思っているわけです。

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さて、個室に入った人に、どうやって正確に時間を申告させるか?という話です。ウンカー(と呼ぶのかな?つまり個室ユーザーのこと)は、いったんトイレに入ったら、よそのヤツの事情など忘れます。鍵をかけた瞬間に、それまでの気持ちはどこへいったやら、人はいきなり強気になる。僕だったら実際のところ4分でおわりそう でも、しゃあしゃあと「15分」と自己申告するんじゃないかな?外の人から「まだか!?」と外からせかされたくないからね。正直になるメリットがない。人間は自分に利益のないことは しないものです・・・

僕だったらどういうしくみをつくるかな? 

まずこのシステムのいちばん大きい問題は、「鍵をかけた瞬間から人は強気になる」ことです。

だからたぶん、まず、

●入室する前に事前申告させる(強気になれる前に掛け金を設定する)

とするでしょうね。これがゲームの基本です。それから、

●(自己申告の)時間を超過したら強制的にドアが開く(ペナルティを課す)

ようにするのと、あともう一つ

●短く用を足した人にメリットをつくる(ハイスコアのごほうび)

でしょうね。

こう整理するとわかると思うんですが、これ要するに、ゲームデザインです、(ゲームデザインってのは、ボタンの 大きさや色をデザインすることじゃないです。人の行動を変えるしくみ、のことなんです。)

さてこれらをどう料理するか、に先端の技術(このトイレでいうと、設備の予算、ってことになるかな)が関係してくる。

いちばんシンプルなシステムは、自己申告時間を入力して整理券をとらせる。で「自己申告が短い人から指名して使用させる」って音声プログラムをつけた個室かな。長く使用する人は行列のいちばん最後にまわされるから、使用予定時間の競争になる(!) 「早く使いたかったら早く用を住ませ」のオークションです。こうなると僕は「30秒」って申告するでしょうかね。で、その時間が過ぎたら強制的にドアが開くわけ。(笑)

これでもう十分ゲームです。新客はトイレ内を見回し「おまえは何秒といれたんだ?」と目と目で駆け引きがはじまります。

すこしコストがかさむアイデアに、申告使用時間に応じて前金で課金しておくってのもあります。もちろん課金はタバコや高速の税金とおなじで、長便滞在の抑制。

いちばん安い方法だと、スーパーのレジ待ちと同じで、2分以内の人の専用個室、5分以内の人の専用個室、と区分して行列させるというもの。ここでもとても重要なことは、「2分たったら強制的にドアが開く」ということ。これがないと2分個室の行列が短くならない。それだと短く済ます人へのインセンティブがない。

使用者に直接語りかけたならば、「千円あげるからあと1分ででてくれませんか?」って思うことも、僕の場合過去多々あります。これはネットゲームのノウハ ウで、「かけひき」です。

実のところ、高層エレベーターも、もっと効率化することは可能なんです。ただ、この整理券のような「個別呼び出し」が不可欠になってくる。「28階にお向かいの方はD号に乗ってください」ともし本当にできるならば、格段に効率化できるんです。同時に、混乱も生じる。この混乱が想定範囲外の遅延を出す・・・。人間ってのは、かならず間違えるものですから。

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ゲーム理論を駆使したインターフェイスのデザインをやる人って、いまのところいないんじゃないかな?建築家がすこしそれをやっているのと、緊急機器をデザインしている人が使ってるくらいだろうか?とても面白い分野なんです。コンピューター業界でそれを意識している人もほとんどいないけどね。

公共のサービスほどこの必要が高いんだけど、マナーってのはほとんどがこれに該当する。つまり、関係者が固い信頼関係にあれば、マナーを守ります。でも一人が自己の利得に走ると総崩れになる。だから、互いに信頼関係を確認しあってないと成り立たないというものです。これゲーム理論だと「囚人のジレンマ」っていいます。